みつばち社Reports 東京町工場ものづくりのワ Go!!Go!!町工場 第1回居酒屋座談会編 こんなに披露して大丈夫!?「あなたの知らない町工場の世界」正真正銘のぶっちゃけです 1/3 みつばち社Reports 東京町工場ものづくりのワ Go!!Go!!町工場 第1回居酒屋座談会編 こんなに披露して大丈夫!?「あなたの知らない町工場の世界」正真正銘のぶっちゃけです 1/3 みつばち社Reports 東京町工場ものづくりのワ Go!!Go!!町工場 第1回居酒屋座談会編 こんなに披露して大丈夫!?「あなたの知らない町工場の世界」正真正銘のぶっちゃけです 1/3

登場人物

司会:みつばち社 小林奈穂子(みつばち1号)

ユニットで活動するみつばち社の1号。プランナー兼ライター。海外をめぐり、複数の職場を渡り歩いたのち、化粧品メーカーでバストイレタリーブランドの立ち上げ・店舗展開をサポート。その後前職にて数多くの大手企業の社会貢献活動をプロデュースする一方、200件を超える取材・ライティングを経験。2013年に独立。みつばち社はsmall is beautifulを掲げ、小規模な自治体や町工場などのコミュニケーションデザインを手がけている。

足立区の、今野製作所にほど近い「ファミリー割烹祥月」に集合した3社長と事務局長。ここは今野製作所の会長(現在の拠点は福島県)が、かつて毎日出没したとウワサされるお店です。ご近所であるための油断からか、財布を忘れた今野社長。「いいよー、取り立てに行くから!」ときっぷのいい女将。今宵もビールから始まります。

絶滅種タコ社長VS東京町工場の雄 絶滅種タコ社長VS東京町工場の雄

小林:
さて、乾杯が済んだところで早速ですが、出来上がってしまう前に、いろいろお話しいただきます。町工場の“真の姿”が伝わるように!お願いします。
西川社長:
え?飲んでいいんでしょ?
小林:
はい、それも“真の姿”ですもんね。どうぞ。えー、まず、まさに三者三様という感じの3人の社長さんですが、人望の厚い今野社長、ムードメーカーの西川社長、真面目でソフトな石岡社長という印象。宮本事務局長、合ってますか?
Mr.宮本:
そうですね。はい、だいたい。
西川社長:
ムードメーカーって、お笑い担当ってことじゃないの?
小林:
いや、まぁ、それでもいいと思いますが。
今野社長:
でも西川さんは本当にすごいんですよ。経営者でありながら、熟練の職人で、なんでもつくれちゃう。僕なんかは町工場の家に生まれながら、職人になれなかったところにコンプレックスもあるので、尊敬しますよ。
西川社長:
またまた!(今野社長を指して)この方、こんなこと言ってますけど、俺を「タコ社長」とか呼ぶんですよ!
一同:
爆笑
小林:
タ、タコ社長…!?
今野社長:
ちょっと待ってくださいよ、誤解ですって!僕が言いたかったのはね、「男はつらいよ」の寅さんに出てくるタコ社長ね、あの愛すべきキャラクター。あんな風な、下町のザ・町工場の社長っていうのはさ、もういなくなっちゃったわけですよ。絶滅危惧種どころか絶滅種。西川さんはそれだってことですよ。
西川社長:
そんな、人をカブトガニかシーラカンスみたいに。
今野社長:
シーラカンスってまだ生きてましたっけ?
Mr.宮本:
生きてます、生きてます。
西川社長:
もーっ!そりゃあ今野さんは、デキが違いますからね、東京の中小企業の雄だもの。
一同:
(うなずく)
小林:
やっぱり今野社長は、いろんなところで一目置かれて、信頼が厚いんですか。
一同:
(深くうなずく)
今野社長:
いやいやいや、そんなカッコいいもんじゃないですって!

草津温泉から硫黄島に。石岡社長の恐るべきファミリーヒストリー 草津温泉から硫黄島に。石岡社長の恐るべきファミリーヒストリー

小林:
いつも微笑みながらお聞きになっているご様子の石岡社長はどうですか。実際、真面目でいらっしゃる?
今野社長:
真面目というか、まともですよ。僕の知る町工場の社長の中で、一番まともなんじゃないかな。
石岡社長:
真面目だとね、ずっと自分でも思ってたんですよ。でも最近になってそうじゃないことがわかってきました。
一同:
ええっ!
石岡社長:
自分自身に対してもどこか装っていたみたいです。本当はテキトーな人間だったんですよね。
小林:
自分自身に対しても装っていたとは、なにかミステリアスな。
今野社長:
そうだ。でも、石岡さんは家系がすごいんですよね。どこかそうゆうDNAを…。
小林:
家系が?
石岡社長:
うちの会社はもともと母方の祖父が始めたのですが、その前の代、曾祖父までは草津の温泉宿屋だったんですよ。その曾祖父がですね、一攫千金を夢見て、珊瑚をとりに行ったの。
小林:
珊瑚ですか?草津の温泉から
石岡社長:
要するに、うまい儲け話に乗ったんですよ。それで、珊瑚とりに船出したはいいけど、嵐で転覆して、硫黄島に流れ着いたんです。
一同:
えええーーー!
石岡社長:
苦労したからでしょうね。祖父は曾祖父を反面教師に、堅実に頑張ったようです。あぁ、あのまま草津にいてくれれば、僕も温泉宿のダンナになってたろうに。やりたかったなぁ…。
小林:
ものすごくドラマティックなファミリーヒストリーじゃないですか!NHKの同名番組に出てほしいです。
今野社長:
出てほしい!出てほしい!!
石岡社長:
だから、確かにそうゆうDNAがどっかあるかもしれませんよね。
今野社長:
一攫千金を狙う?
石岡社長:
いえ、あるとすれば口車に乗せられるほうの気がします…。
小林:
うーん、ではある意味石岡社長が一番、これからなにかこう、意外な姿に変身するかも?
石岡社長:
そう、まだ、さなぎなんです。
西川社長:
出た!さなぎマン!
一同:

昭和町工場のオヤジ、寿司折下げて千鳥足 昭和町工場のオヤジ、寿司折下げて千鳥足

今野社長:
西川さんのご先祖もユニークですよね。
西川社長:
先祖じゃないですよ!うちは親父。親父がトンデモないだけです!
小林:
トンデモない…。
西川社長:
どうしようもない破天荒親父ですよ。酒は飲むし金は無計画にじゃんじゃん使って、果てにさっさと死んだでしょ。おかげでどれだけ大変だったことか!だいたい、俺の夢は歴史学者だったんですよ。なのに「町工場の息子がそんなのダメに決まってんだろ!」って。そんで、大学出たら取引先の企業に修行に行け※1と言われてたのに、自分が好き放題やって体悪くしたもんだから、やっぱりお前も最初から西川精機だと。
今野社長:
町工場って、そうゆう話多いですよね。僕の父親も、…まだ存命ですけど(笑)、まぁ、ひどかったですよ。毎晩酔っぱらって正体なくして帰ってきてさぁ。父親を見て育って、町工場のオヤジ像が著しく悪かったから、絶対にこんな道に入らないぞ!って思ってました。今はね、父親も苦労してたんだなって、ちょっとはわかるようになりましたけどね。
西川社長:
子どものころ、親父が酔っぱらって寿司折下げて帰ってくるわけ。その寿司がまたカッチンコッチンでまずいの。いっつもかんぴょうに鉄火にカッパ巻。わざわざ起こされて、食べたくない素振りを見せようものなら「お前、俺の買って来た寿司が食えないのか?!」って。
小林:
ははは。絵に描いたような…。酔っぱらって寿司折下げて帰って来るお父さんって、サザエさんでしか見たことないんですけど。
今野社長:
それも絶滅しましたね。
※1:かつては、町工場の後継ぎが取引先に修行で入ることでパイプを太くする、政略結婚的な就職がしばしばあった。